銀歯は体に影響する?健康リスクと見直しのポイント
「銀歯は体に悪い」そんな話を耳にしたことがあるかもしれません。日本の歯科治療では一般的な銀歯ですが、含まれる水銀や金属アレルギーのリスクなど、健康への影響が気になる方も多いのではないでしょうか。
今回は、銀歯の基本的な構成から健康への影響、頭痛やめまいなどの症状との関連性、さらには世界各国の規制動向まで解説します。また、気になる銀歯を見直すべきタイミングや銀歯の交換についても紹介します。
ご自身のお口の中の銀歯について不安がある方は、ぜひ市ヶ谷番町歯科クリニックにご相談ください。歯科医師がしっかりとお口の中を拝見し、患者さま一人ひとりに合った治療をご提案いたします。
1. 銀歯とは何か
1.1 銀歯の基本的な構成と材質
まず、「銀歯」という名前から純銀でできていると思われがちですが、実際はそうではありません。銀歯は正式には「歯科用水銀アマルガム(アマルガム)」や「金銀パラジウム合金」などと呼ばれる金属製の詰め物や被せ物のことです。
歯科用水銀アマルガム(アマルガム)は主に以下の成分で構成されています:
成分 | 含有率(%) |
---|---|
水銀 | 約50% |
銀 | 約35% |
スズ | 約9% |
銅 | 約6% |
亜鉛 | 少量 |
一方、歯科用金銀パラジウム合金は以下のような成分で構成されています:
成分 | 含有率(%) |
---|---|
パラジウム | 20% |
金 | 12% |
銀 | 50%前後 |
銅 | 20%前後 |
その他インジウムなど | 数% |
このような金属の組み合わせにより、銀歯は以下のような特性を持っています:
- 強度が高く噛む力に耐えられる
- 比較的安価で製作できる
1.2 日本での銀歯使用の現状
日本では現在も銀歯が広く使われています。とくに、奥歯の治療において多くののケースで金属製の詰め物や被せ物が選択されています。これは主に以下の理由からです:
1.2.1 保険適用される治療として定着
銀歯は健康保険が適用される材料として長く使われてきました。そのため、経済的な理由から多くの患者さんに選ばれてきた歴史があります。
1.2.2 耐久性の高さ
奥歯は強い咬合圧がかかるため、耐久性の高い金属材料が好まれてきました。銀歯は5年以上使用できるケースも珍しくなく、コストパフォーマンスの面でも優れた選択肢と考えられてきました。

1.3 保険適用される銀歯治療について
1.3.1 保険適用される銀歯の種類
保険が適用される銀歯治療には主に以下のようなものがあります:
- インレー(詰め物):虫歯を削った後の穴を埋める金属の詰め物
- クラウン(被せ物):歯の大部分を覆う金属の被せ物
- ブリッジ:失った歯の代わりに両隣の歯に銀歯をかぶせて連結した補綴物
1.3.2 保険適用外の選択肢との比較
保険適用外の白い詰め物や被せ物と比較すると、銀歯治療は経済的負担が少ないという大きなメリットがあります。例えば、セラミックの被せ物は1本あたり約8〜15万円程度かかることがありますが、保険適用の銀歯なら数千円程度で治療できます。
一方で、保険外診療には以下のようなメリットがあります:
- 審美性に優れている(特に見た目を気にする前歯などに重要)
- 金属アレルギーの心配がない素材を選べる
- より精密な適合が期待できる
- 汚れや細菌がつきにくい=虫歯になりにくい
市ヶ谷番町歯科クリニックでは、法人内にラボを設けており、保険外診療の被せ物は、経験豊富な技工士が色味や形を精密にあわせて、完全オーダーメードでお作りします。
2. 銀歯の健康への影響と懸念点
銀歯は保険適用されるため長く使用されてきましたが、近年その安全性について様々な議論があります。
2.1 銀歯に含まれる水銀の問題
「歯科用水銀アマルガム(アマルガム)」は約50%が水銀でできており、この水銀含有が最も大きな懸念点となっています。
水銀は有害物質として知られており、高濃度で体内に取り込まれると神経系に影響を与える可能性があります。咀嚼や歯ぎしりなどの行為によって、銀歯から微量の水銀蒸気が継続的に放出されることが研究で示されています。

2.2 金属アレルギーのリスク
銀歯に含まれる様々な金属成分は、体質によっては金属アレルギーを引き起こす可能性があります。
金属アレルギーの症状としては以下のようなものが挙げられます:
症状の種類 | 主な症状 |
---|---|
口腔内症状 | 口内炎、舌の痛み、味覚異常、口腔粘膜の発赤など |
皮膚症状 | 湿疹、かゆみ、発疹、じんましんなど |
全身症状 | 倦怠感、頭痛、関節痛など |
金属アレルギーの方、疑いがある方は、金属以外の素材を選択することがおすすめです。
2.3 口腔内電流(ガルバニック電流)の発生
口の中に異なる種類の金属が存在すると、唾液を電解質として微弱な電流が流れる「ガルバニック電流」が生じることがあります。金属味や電気味(ピリピリ感)を感じるだけでなく、自律神経の乱れなど身体への悪影響を及ぼすことが分かっています。
2.4 見た目や審美性の問題
健康面への影響だけでなく、銀歯の金属色が目立つという審美的な問題も多くの方が気にしています。特に笑った時に見える奥歯の銀歯は、自信を持って笑うことを躊躇させる原因になることも。
審美性を重視する場合、保険外診療になることが多いですが、長期的な満足度や精神的な安心感を考慮すると、検討する価値はあるでしょう。
2.4.1 審美的な問題が与える心理的影響
見た目の問題は単なる見栄えの問題ではなく、心理的な影響を与えることがあります。銀歯が目立つことで:
- 笑顔に自信が持てなくなる
- 人前で話すことに抵抗を感じる
- 写真撮影を避けるようになる
などの行動変化が生じることもあります。審美的な治療は「見た目のぜいたく」ではなく、生活の質を向上させる重要な選択肢とも考えられます。
銀歯の健康への影響については科学的な議論が続いていますが、気になる症状がある場合は、かかりつけの歯科医に相談することをおすすめします。また、新しく詰め物や被せ物を入れる際には、素材の選択肢について歯科医と十分に相談し、自分に合った選択をすることが大切です。

3. 銀歯が体調不良を引き起こす可能性
近年、銀歯と全身の健康との関連性について関心が高まっています。銀歯によって引き起こされる可能性のある体調不良について、さまざまな症状が報告されていますが、その因果関係については意見が分かれています。
3.1 頭痛やめまいとの関連性
銀歯に含まれる金属成分、特に水銀や他の合金が原因で、頭痛やめまいなどの症状を訴える方がいます。これらの症状は、特に複数の銀歯を持つ方や、異なる金属が口腔内にある場合に報告されることがあります。
口腔内の金属が引き起こす微弱な電流(ガルバニック電流)は、神経系に影響を与え、頭痛や神経痛の原因になる可能性があります。また、金属イオンが溶け出して体内に吸収されると、めまいや平衡感覚の乱れといった症状を引き起こすことも指摘されています。
ただし、これらの症状は他の原因でも起こりうるため、自己判断は避け、専門医に相談することが大切です。

3.2 慢性疲労や自己免疫疾患との関係
銀歯から微量に放出される金属成分が、体内の免疫系に影響を与え、慢性疲労症候群や自己免疫疾患との関連性が指摘されることがあります。
特に水銀は神経毒性があり、長期間にわたって少量ずつ体内に蓄積されると、以下のような症状を引き起こす可能性があるとされています:
- 原因不明の疲労感
- 集中力の低下
- 記憶力の問題
- 関節痛や筋肉痛
- 消化器系の問題
3.3 自分の状態を把握するためのチェックポイント
銀歯が体調不良の原因かどうかを自己判断することは難しいですが、以下のようなチェックポイントが参考になるかもしれません:
- 金属系の詰め物や被せ物をした後に新たな症状が現れた
- 口腔内で金属味を感じることがある
- 異なる金属の詰め物や被せ物が接触している
- 複数の慢性的な症状があり、原因不明と言われている
- 金属アレルギーの既往歴がある
これらの項目に該当する場合、金属アレルギー検査や詳しい診断を受けることをお勧めします。歯科医と内科医、場合によっては統合医療の専門家と連携して診断を進めることが有効な場合があります。
ご自身のお口の中にどんな素材の被せ物・詰め物が入っているか、わからない方もいらっしゃると思います。歯科医師にて確認・判断可能ですので、気になる方はお気軽にお問い合わせください。
4. 世界各国の銀歯に対する規制と動向
近年、銀歯(アマルガム)に含まれる水銀の健康影響が注目され、世界中でその使用に関する規制や見解が大きく変化しています。
4.1 欧米諸国での水銀規制の現状
欧米では銀歯に対する規制が年々厳しくなっています。
EUでは「水銀規制法(EU 2017/852)」により、15歳未満の子ども、妊婦、授乳中の女性へのアマルガム使用が禁止されています。さらに2030年までに段階的に銀歯の使用を全廃する計画が進められています。
スウェーデンとノルウェーでは環境保護の観点から、すでに銀歯の使用が実質的に禁止されています。デンマークも2018年から使用を厳しく制限しています。
アメリカでは、FDA(食品医薬品局)がアマルガムの安全性について、その使用を認めていますが、同時に歯科医師に対して患者へ選択肢の説明を推奨しています。カリフォルニア州など一部の州では、アマルガムに水銀が含まれていることの警告表示が義務付けられています。
環境への水銀排出削減も大きな目的となっています。歯科治療で使用されるアマルガムは、EUにおける水銀使用量の大部分を占めており、これに対する規制が強化されています。EUでは、2025年からアマルガムの使用を段階的に禁止する方針が進められており、これは水銀による環境汚染を防ぐための取り組みの一環です。

4.2 日本の歯科医療における銀歯の位置づけ
日本では、銀歯は健康保険が適用される治療として長年広く使用されてきました。しかし、国際的な動向や患者さんの審美的要望を受けて、「メタルフリー(金属を使用しない治療)」を推奨する医院が増えているなど、状況は少しずつ変化しています。
市ヶ谷番町歯科クリニックも「メタルフリー」を推奨しています。お口の中の詰め物や被せ物が気になる方は、お気軽にお問い合わせください。
5. 銀歯を見直すタイミングと方法
銀歯は耐久性に優れ、長年にわたって使用できる歯科材料ですが、永久的なものではありません。経年劣化や様々な理由から、見直しが必要になるタイミングがあります。この章では、銀歯の交換を検討すべき時期や、安全に交換するための方法について詳しく解説します。
5.1 銀歯の寿命と交換が必要なサイン
銀歯の平均的な寿命は約5〜7年と言われています。しかし、個人の口腔環境や噛み合わせの状態によって大きく異なります。定期的に歯科医院で検診を受け、銀歯の状態をチェックしてもらうことが重要です。
以下のようなサインが見られたら、銀歯の交換を検討するタイミングかもしれません:
- 銀歯の周囲に黒ずみや変色が生じている
- 銀歯と歯の間に隙間ができている
- 銀歯の下で痛みや違和感がある
- 噛むと痛みを感じる
- 銀歯自体が摩耗して平らになっている
- 口の中で金属味を感じる
- 歯ブラシやフロスがひっかかる
- 歯茎が赤くなったり腫れたりしている
銀歯の状態が良好でも、金属アレルギーの症状が出た場合や、より審美性の高い材料に変えたいという希望がある場合も、交換を検討する理由になります。

5.2 銀歯交換の流れと準備
銀歯の交換は通常、以下のような流れで進みます:
- 初診・相談:現在の口腔内状態の確認と治療計画の相談
- 検査:レントゲン撮影、検査
- 治療計画の決定:代替材料の選択と費用の確認
- 銀歯の除去:安全対策を講じた上での除去作業
- 新しい材料での修復:型取りや仮歯の装着が必要な場合も
- 調整・完成:噛み合わせの確認と必要に応じた調整
- 定期検診:新しい詰め物・被せ物の状態確認
銀歯交換の前に、保険適用される範囲と自費診療になる部分を明確に理解しておくことが大切です。
代替材料 | 保険適用 | 特徴 |
---|---|---|
プラスチック (コンポジットレジン) |
○(条件あり) | ・比較的安価 ・即日修復可能 |
セラミック | × | ・透明感があり自然な見た目 ・生体親和性が高い ・見た目・噛み合わせともに精密に製作可能 |
ジルコニア | × | ・セラミックより丈夫で硬い (力のかかる奥歯におすすめ) ・見た目・噛み合わせともに精密に製作可能 |
ジルコニアセラミック | × | ・最も色味の再現性が高い (前歯におすすめ) ・見た目・噛み合わせともに精密に製作可能 |
ゴールド | × | ・しなやかで耐久性に優れる ・金属アレルギーが少ない |
銀歯の見直しは単なる審美的な改善だけでなく、お口の健康と全身の健康につながる重要な決断です。不安や疑問がある場合は、まずは歯科医師に相談し、自分に合った最適な選択をしましょう。
また、銀歯を交換した後も定期的な検診でお口の健康をチェックし、新しい詰め物や被せ物を長持ちさせるためのケアを続けることが大切です。歯科医師や歯科衛生士のアドバイスに従い、適切なお口のケアを心がけましょう。
6. まとめ
銀歯は日本の歯科治療で広く使われていますが、健康への影響が懸念されることもあります。特に、水銀を含むアマルガムや金属アレルギーのリスク、口腔内の微弱電流(ガルバニック電流)による影響などが指摘されています。また、欧米では銀歯の使用を規制する動きがあり、日本でもメタルフリー治療を選択する方が増えています。
銀歯の寿命は通常5~7年程度とされ、劣化すると虫歯や歯茎の炎症の原因にもなります。見た目や健康面が気になる方は、セラミックやジルコニアなどの金属を使用しない素材への交換を検討するのも一つの選択肢です。
銀歯の影響が気になる方や交換を考えている方は、まずは市ヶ谷番町歯科クリニックにご相談ください。歯科医師と、最適な治療方法を見つけましょう。当院で治療していない銀歯や、ずいぶん昔に治療した箇所でも、素材や状態を確認可能ですのでご安心ください。定期的なチェックをしながら、お口と全身の健康を長く維持できるようサポートいたします!





